180km 2Lap
T1では、万全の防寒対策を施した。
「スイムアップ後BIKEでは寒さで震えるから、しっかりと防寒対策を」とは、経験者談。
今まで幾つかIRONMANになって来たが、長袖、アームカバー、ウインドブレーカーといった特に「防寒対策」の準備をしたことが、無い。
確かに着替える時に、若干の寒さを感じた。過剰反応し過ぎではないかと訝ったが、空気を切って疾走するBIKE Partを想像すると、自分を納得させるしかない。

着替えながら「おにぎり」を頬張る。長袖BIKEジャージにアームカバーを装着、ベスト型のウィンドブレーカーを身体へと重ねる。

そして、お腹にミニカイロを貼付する。お腹の調子が数日前から良くなかったのだ。
実は、直前まで行くべきか迷っていた。
出発二日前から風邪をひいたのだ。家族内で風邪が流行ってしまい…だから、旅行中ずっと風邪薬を飲み続けた。その影響からお腹がゆるくなってしまっていた。

着替えを終え立ち上がり、BIKEラックへ歩き始める。直ぐにケイレンを起こした両脚が反応する。既に両脚は筋肉痛のオーケストラが始まっていた。
だからなのか、まだBIKEに跨ってもいないのにランが心配になる。
BIKEスタート。意外に寒さは感じない。気温は思いのほか上がってきたようだった。

スタート後、約2キロ程で住宅地をパスする。
舗装路面は事前情報の通り、コース上路面の殆どが粗い。ほんの稀に路面が黒く輝きスムースな部分もあったが、常に小刻みに身体へと容赦ない振動が伝わってくる。マレーシアに比べると、穴が開いていないだけまだましだが、、、
視界180度に広がる丘陵地。そこに点在する牛、羊、馬達は、のどかに牧草を喰む。
30kmあたりまでは調子が良く(たったそれだけ)、それもその筈で全体的に下り基調。風景も道も十分楽しませてくれた、、、しかし今回の自分のレースはここまでだった。

ニュージーランドらしい景色が目前に広がる。最初はそのおおらかさや、真っ直ぐに延びる道、空の青さや牧場の鮮やかな緑色に目を奪われ、感動すら覚えた。しかし、全行程の9割である風景は感動の容姿から残忍な姿へと変貌し、メンタルへのダメージは深刻だった。
ゆるいお腹は1Lapの30km過ぎから騒ぎ出す。発生した大問題をエイドで解決しなければならない。
そのエイド、180km中4か所のみ。ということはトイレの設置場所も同じ。その少なさに脂汗を垂らした。大問題が解決することは大いに結構、しかしその反面、確実に体力は奪われた。
お腹問題も相俟って50kmの折り返しから1Lapにもかかわらず風景を楽しむ余裕は全く無い。
折り返し迄は何とかたどり着く。おなかに力が入らず、明らかにペダルにパワーを伝えられない。そんな自分に鞭を打つ。しかし、そんな力も出ない状態に陥る。
左右には、のんびりとデカいケツをこちらに向けた牛たち。前方にはそれに負けないくらいデカいケツの選手たち…いつもだったら笑い飛ばせるところだったが、そんな余裕は全くない。
「あれだけ練習したのに」と思う自分を次々に選手たちがパスしていく。

加えて、140kmあたりから蛇行走行となる。加えて、補給食を全く受け付けなくなる。水だけ。無理に飲み込むと、吐き気がするし、実際何度もえづいてしまった。更に頭痛にも悩まされることになる。
後ろからくる選手たちからは「Keep Left!」「Go Right!」を言われ悔しさ倍増だった。しかし、出せるスピードは15-20km。カメさん状態でだから仕方がない。今思えば、今日までの練習は、完走するための練習だったのだと納得するしかなかった。
デカケツの彼ら彼女らに、どんどん抜かされ置いて行かれるのは悔しかった。
どうにもこうにも、力が出ないのでBIKEを降りて、路肩の高さ2mはあろうかという牧草に身体を横たえる。これがふかふかでなんと気持ち良いことよ。10分ほどこの布団で休憩したのち、リスタートをする。
1Lapで終わろうと思ったが、何とかBIKEゴールへ入った。BIKEをボランティアへ渡しT2へ向かう。しかし、真っ直ぐ歩けない。身体中からアラートが発信されていることは明らかだった。

気温差にやられた感しかなかった。防寒対策は万全だったが、まさか熱中症になるなんて、想像を遥かに超えていた。これがIRONMANなんだろう。

まだまだ、続く、、、